「髪の色を青にして」「この衣装を着せて」とチャットに書くだけで、Unity Editor 上の操作を AI が代わりに実行する。Unity AI Agent(UnityAgent)は、そんな触れ込みで2026年春に BOOTH で無料公開された Editor 拡張です。話題性は大きい一方で、「何が前提で、どこまで任せてよくて、失敗したらどう戻すのか」を押さえずに入れると、プロジェクトを壊しかねないツールでもあります。この記事では BOOTH の商品説明(2026年9月10日確認)と、CGWORLD・MoguLive の報道をもとに、導入前に知っておくべきことを整理します。
編集部は本ツールを独自に検証していません。機能・対応環境は配布元(紫陽花広場Works、作者: 朔さくパンダ)の公開情報に基づきます。
何ができるツールか
商品説明によると、日本語で指示すると AI がヒエラルキー操作・コンポーネント設定・マテリアル編集など100種類以上のツールから適切なものを選び、Unity Editor 上で実行します。VRChat のアバター改変に特化しており、次の用途が挙げられています。
衣装の着せ替え(Modular Avatar 対応)、色変更とテクスチャ編集(HSV 調整・グラデーション・部分着色)、表情セットアップ(FaceEmo 連携)、PhysBone 設定、オブジェクトの ON/OFF トグル作成。VRChat SDK・Modular Avatar・Avatar Optimizer(AAO)への対応も明記されています。
さらに「桜の花びら模様をつけて」のような指示で AI がテクスチャ画像を生成して適用する機能や、スマートフォンやタブレットから作業状況を確認・指示できる Web 監視ダッシュボードも案内されています。AI 以外にも、ボーン調整ツール、衣装変換ツール、メッシュ別のペイントツールがアルファ段階として同梱されています。
安全確認と「元に戻す」
AI に Unity を触らせるうえで一番気になるのが、削除やリセットのような取り返しのつかない操作です。商品説明では、破壊的な操作は実行前にチャット内で確認が入り、その厳しさを「慎重/バランス/高速」のプリセットで調整できるとされています。加えて「元に戻す」ボタンで、セッション中の変更をまとめて Undo できると案内されています。
とはいえ、配布元自身が「AI の出力は完璧ではありません。必ず結果を確認し、意図しない変更は元に戻してください」「本ツールは無保証です。バックアップを取ってからご利用ください」と書いています。Undo はあくまで最後の保険で、作業前にプロジェクトフォルダをまるごと複製しておくのが前提です。
前提となる環境
商品説明に記載の動作環境は次の通りです。
Unity 2022.3.22f1
VRChat SDK 3.x(推奨。なくても基本機能は動作)
lilToon と Modular Avatar(必須。衣装セットアップに必要)
Windows 11 のみサポート
lilToon と Modular Avatar が入っていないと衣装まわりの機能が使えません。まだの人は「Modular Avatarで衣装を着せる 非破壊改変のすすめ」と「lilToonの基本 色替えの第一歩」を先に済ませてください。
引用記事Modular Avatarで衣装を着せる 非破壊改変のすすめアバター
引用記事lilToonの基本 色替えの第一歩アバター
AI プロバイダーと費用
ツール自体は無料ですが、動かすには AI プロバイダーの API キーが必要です。商品説明で挙げられている対応先は、Google Gemini(API の無料枠あり)と、OpenAI 互換 API(LM Studio や Ollama などのローカル LLM。テストが完了しておらず不具合の可能性があると注記)です。開発のテストには Gemini 2.5 Flash が使われており、安価なこのモデルの利用が強く推奨されています。
API キーは Google AI Studio で取得します。商品説明の手順は、Google アカウントでログインし「API キーを作成」を押してキーをコピー、ツールの設定画面で Provider を Gemini、接続方式を GoogleAI にしてキーを貼り付ける、というものです。無料枠は1分あたりのリクエスト回数に上限があり、個人利用なら十分と案内されています。レート制限を緩めたい場合や商用利用では Vertex AI を使う手順も併記されていますが、こちらはクレジットカード登録済みの Google Cloud 請求先アカウントが前提です。
見落としやすいのは、送信したデータの扱いが各 AI プロバイダーの規約に従う点です。アバターの構成情報やテクスチャが外部の API に送られることを理解したうえで使ってください。購入した3Dモデルの利用規約によっては、この点が問題になる可能性もあります。
導入手順
1. unitypackage をインポート(VPM パッケージにも対応。案内は同梱PDF)
2. ツールバーメニューの「UnityAgent」を開く
3. 設定画面で API キーを入力
4. チャット欄にやりたいことを入力して送信
BOOTH では「導入手順PDF」が0円で、「おやつ代」版(内容は同一)が500円で配布されています。ソースコードは GitHub(lighfu/unity-agent)で早期アクセスとして公開されており、ドキュメントは Notion、不具合報告と要望は Discord で受け付けると案内されています。
うまく動かないときの考え方
MoguLive の試用記事では、「髪を黒にして」のような大まかな指示では失敗し、「髪に使われているマテリアルを黒に変更して」と対象を具体的に指定すると成功したと報告されています。配布元も「プロンプトのシチュエーション不足で、少ない手数で結果にたどり着くことが難しい場合がある」と明記しています。
指示を出すときは、人に頼むときと同じ粒度で書くのがコツです。「どのオブジェクトの」「どのコンポーネント/マテリアルを」「どうしたいか」を一文に入れると、AI がツールを選びやすくなります。1回で全部やらせるより、1操作ずつ指示して結果を確認する方が、失敗したときの切り分けも簡単です。
向いている人、向いていない人
Unity の操作が苦手で、コンポーネントやプロパティ名を覚えきれない人、同じ作業の繰り返しを減らしたい人には、試す価値があります。特に「衣装を着せる」「色を変える」のような定型作業は、AI が得意とする領域です。
一方で、Unity の基本操作を一度も学んでいない人が最初から AI に丸投げするのはおすすめしません。結果が正しいかを判断できないと、Undo すべきかどうかも分からないからです。「VRChat制作のためのUnity基本操作」で最低限の見方を身につけてから使う方が、結果的に早く上達します。
引用記事VRChat制作のためのUnity基本操作技術・制作
よくある質問
Q. 本当に無料で使えますか。
A. ツールは無料です。Gemini API の無料枠を使えば追加費用なしで利用できると案内されています。無料枠の上限を超える使い方や Vertex AI の利用は有料です。
Q. Mac でも動きますか。
A. 商品説明では Windows 11 のみサポートとされています。
Q. Modular Avatar なしで使えますか。
A. lilToon と Modular Avatar は必須と明記されています。衣装セットアップ機能がこれらに依存するためです。
公式情報
BOOTH 商品ページ(紫陽花広場Works、2026年9月10日確認):
https://booth.pm/ja/items/7993112
GitHub(早期アクセス):https://github.com/lighfu/unity-agent
報道: CGWORLD「VRChatアバターカスタマイズが可能な無料のAIエージェント『Unity AI Agent』リリース」(2026年3月)、MoguLive「VRChatのアバター改変を自動化 Unityエディタ拡張『Unity AI Agent』が無料公開 実際に試してみた」
