Blender は何でもできる反面、機能が多すぎて「何から学べばいいか分からない」と手が止まりがちです。VRChat のアバター改変に必要な操作は、Blender 全体から見ればごく一部です。この記事では、改変に絞った学習の順番を3ステップに分け、各ステップで覚える操作、ゴールの目安、つまずきやすい所、挫折しない学び方をまとめます。
先に決めておくこと
ロードマップに入る前に、3つだけ準備します。
Blender の導入: LTS 版を入れます。バージョン選びとインストール、最初の画面の見方は「Blender導入 インストールと最初に覚える操作」にまとめています。
引用記事Blender導入 インストールと最初に覚える操作技術・制作
目的の改変を1つ決める: 「この服をこのアバターに着せる」「この髪型の前髪を短くする」のように、完成の形が目に見えるものにします。目的が決まると、覚えるべき操作が自動的に絞られます。
バックアップ: 改変前の FBX と Unity プロジェクトを複製しておきます。Blender の作業は FBX の差し替えを伴い、失敗すると Unity 側の設定がまとめて外れることがあります。
3ステップのロードマップ
ステップ1 見る・動かす(目安 1〜2日)
最初に覚えるのは、視点操作と選択、そして G(移動)・R(回転)・S(拡大縮小)の3つだけです。
視点 中ボタンドラッグで回転、Shift+中ボタンで平行移動、ホイールでズーム
選択 左クリック、Shift+クリックで追加、A で全選択
移動/回転/拡縮 G / R / S、続けて X / Y / Z で軸を固定、数値入力で正確に
モード切替 Tab でオブジェクトモードと編集モードを行き来
やり直し Ctrl+Z(既定の回数は限られるので、こまめに保存)
ゴールは「既存アバターの FBX を読み込み、服のオブジェクトを選んで動かせる」ことです。ここで作るものは何もありません。触って壊して戻す練習だけで十分です。ショートカットの一覧は「Blenderショートカット 最初に覚える20個」を手元に置いてください。
引用記事Blenderショートカット 最初に覚える20個技術・制作
ステップ2 削る・くっつける(目安 1〜2週間)
改変で最も使う操作群です。ゼロから作るより、まず組み合わせることから覚えると挫折しにくくなります。
削除 編集モードで頂点・辺・面を選んで X → 削除の種類を選ぶ
位置合わせ オブジェクトモードで G/R/S、細部はプロポーショナル編集(O)で少しずつ
結合/分離 結合は Ctrl+J、分離は編集モードで選択して P
ミラー Mirror モディファイアで左右対称に編集
非表示 H で隠す、Alt+H で戻す(作業対象だけを見えるようにする)
ゴールは「非対応の服を1着、自分のアバターに合わせられる」ことです。具体的な手順は「服やアクセサリの位置合わせ Blender改変の基本操作」にまとめています。ここまでで、体にめり込む・浮くといった位置の問題は自分で直せるようになります。
引用記事服やアクセサリの位置合わせ Blender改変の基本操作技術・制作
ステップ3 ウェイトと書き出し(目安 2〜4週間)
追加した服が体の動きに追従するためのウェイト調整と、VRChat に持っていくための FBX 書き出しです。ここまで来れば、オリジナル改変が形になります。
アーマチュア ボーンの親子関係を見る、ポーズモードで動かして追従を確認
ウェイト 素体からウェイト転送 → ウェイトペイントで破綻箇所を手直し
書き出し File → Export → FBX。スケール・適用・対象(選択物のみ)を確認
確認 Unity に読み込み、SDK でポーズを付けて崩れを見る → Blender に戻る
ゴールは「動いても破綻しない改変を VRChat で使える」ことです。ウェイトは一度で決まらないので、Unity で確認して戻る往復を前提にしてください。この往復が速い人ほど上達も速くなります。
挫折しない学び方
チュートリアルを最初から最後まで写経するより、作りたいアバターを1体決めて、必要な操作だけをその都度調べるほうが速く身につきます。具体的には次のループを回します。
1. 作りたい改変を1つ決める
2. つまずいた操作だけを「Blender 結合 やり方」のように操作名で調べる
3. その日のうちに Unity で確認し、崩れた所だけ戻って直す
4. できた操作をショートカット付きで1行メモに残す
5. 完成したらアップロードして使う。次に直したい所が次のテーマになる
3が重要です。Blender の中で完璧を目指すと、Unity に持っていった時点で法線やスケールの問題に当たって最初からやり直しになります。粗くてもよいので早めに Unity で見る習慣をつけてください。
このロードマップに入っていないもの
ゼロからのモデリング(押し出し・ループカット・スカルプト)、リトポロジー、UV 展開、テクスチャペイントは、改変の3ステップの後に学ぶ内容です。改変は「組み合わせる」作業なので、作る前に「削る・合わせる・書き出す」を身につける方が早く結果が出ます。Blender で何ができるかの全体像は「Blender入門 VRChat勢は何に使うのか」を参照してください。
引用記事Blender入門 VRChat勢は何に使うのか技術・制作
テクスチャに興味が向いたら、Blender ではなくお絵描きソフトや Unity 上で描くツールから入る方が近道です。「テクスチャを描くツールの選び方 お絵描きソフトから3Dペイントまで」を参照してください。
引用記事テクスチャを描くツールの選び方 お絵描きソフトから3Dペイントまでアバター
つまずきやすいポイント
Unity に持っていくと巨大・極小になる: FBX 書き出しのスケール設定と、オブジェクトのスケールが「適用」されていないことが原因の定番です。書き出す前に Ctrl+A で全トランスフォームを適用します。
服が体を貫通する: ステップ2の位置合わせ不足か、ステップ3のウェイトが素体と違うかのどちらかです。静止で貫通するなら位置、動くと貫通するならウェイトです。
面が黒く見える・裏返る: 法線が裏向きです。編集モードで全選択し、法線を外側に再計算します。
元のアバターを上書きしてしまった: バックアップから戻します。改変版は必ず別名で保存する習慣をつけてください。
よくある質問
Q. 対応衣装しか使わないなら Blender は不要ですか。
A. 不要なことが多いです。Modular Avatar などで Unity 側で完結します(「Modular Avatarで衣装を着せる 非破壊改変のすすめ」Modular Avatarで衣装を着せる 非破壊改変のすすめ)。Blender が要るのは、非対応衣装や形そのものを変えたいときです。
引用記事Modular Avatarで衣装を着せる 非破壊改変のすすめアバター
Q. 3ステップにどのくらいかかりますか。
A. 週に数時間の学習で、ステップ1が数日、ステップ2が1〜2週間、ステップ3が2〜4週間が目安です。目的の改変が簡単なら、もっと短く終わります。
Q. 動画とテキストどちらで学ぶべきですか。
A. 操作の流れは動画、ショートカットや設定値はテキストが向いています。つまずいた操作名で検索して、出てきた方を見るので十分です。
Q. Blender のバージョンはどれを選べばよいですか。
A. LTS 版が無難です。解説記事や動画と画面が違うときはバージョン差の可能性があるので、記事の公開日と自分のバージョンを見比べてください。
