Meta Quest 単体(スタンドアロン)や PICO で VRChat を遊ぶ人は多く、自分のアバターを Android(Quest)対応にしておくと、その人たちにも自分の姿が見えるようになります。ただし Android 版には PC 版より厳しい制限があり、PC 用アバターをそのままアップロードすることはできません。この記事では、公式ドキュメント(VRChat Creators Docs「Quest Content Limitations」2025年10月8日更新、「Avatar Performance Ranking System」。2026年9月11日確認)をもとに、何が使えないのか、どこまで軽くすればよいのか、実際の作業の流れを整理します。
PC と Quest で何が違うのか
Quest 単体はモバイル機器なので、GPU の性能もメモリも PC より小さく、VRChat 側が使える機能を制限しています。大きく分けて「シェーダー」「コンポーネント」「重さの上限」の3つです。
シェーダー: Android 版アバターで使えるのは VRChat/Mobile 系のシェーダーだけです。公式に挙げられているのは Toon Standard、Standard Lite、Bumped Diffuse、Bumped Mapped Specular、Diffuse、Matcap Lit、Toon Lit、Particles/Additive、Particles/Multiply の9種類です。lilToon や Poiyomi などの PC 用シェーダーはそのままでは使えないため、マテリアルを作り直すか変換する必要があります。公式は、すべてのマテリアルで Enable GPU Instancing をオンにすることも推奨しています。
コンポーネント: 次のものはアバター上で完全に無効になります。Dynamic Bones(PhysBone を使う)、Cloth、Camera、Light、Audio Source、Rigidbody・Collider・Joint などの物理、Unity 標準の Constraint(VRChat Constraints は使える)、FinalIK。Particle System は使えますが、PC のアバターと同じ厳しい制限がかかります。
重さの上限: パフォーマンスランクの基準が PC とは別に定められています。Poor の上限は、三角形 20,000、テクスチャメモリ 40MB、マテリアルスロット 4、Skinned Mesh 2、ボーン 150、PhysBone コンポーネント 8 個(影響トランスフォーム 64、コライダー 16、判定 64)、Contacts 16、パーティクル 2 です。Medium 以上を狙うなら三角形 15,000、テクスチャメモリ 25MB、マテリアル 2、PhysBone 6 個以内になります。
「見えない」の正体は表示基準
Android 版では、見る側の「Minimum Displayed Performance Rank」の初期値が Medium です。つまり相手が設定を変えていなければ、自分のアバターが Poor か Very Poor だと、Quest 単体の相手にはフォールバックアバターかインポスターが表示されます。相手が個別に Show Avatar を選べば見えますが、それを全員に頼むわけにはいきません。
さらに公式は、Very Poor の上限を超えたアバターは Show Avatar の状態にかかわらず PhysBone・Contacts・VRChat Constraints がすべて外されると明記しています。揺れものを残したいなら、少なくとも Poor 以内に収める必要があります。Very Poor のアバターと、それに対する Show Avatar は将来なくなる可能性があるとも注記されています。ランクの仕組み全体は「アバターが灰色に? 表示設定とパフォーマンスランク(Performance Rank)の基本」を参照してください。
引用記事アバターが灰色に? 表示設定とパフォーマンスランク(Performance Rank)の基本初心者ガイド
対応の流れ
作業は「PC 版とは別の Android 版を、同じ Blueprint ID に追加する」形で進めます。プラットフォームごとに自動で切り替わるので、PC の人には PC 版、Quest の人には Android 版が見えます。
1. PC 版を先にアップロードしておく
2. 目標ランクを決める(Quest の人に見せたいなら Medium 以上)
3. 使えないものを外す・置き換える
- シェーダーを VRChat/Mobile 系へ
- Cloth / Light / Audio Source / Dynamic Bones を削除
4. 軽くする
- テクスチャの Max Size を下げる(テクスチャメモリ 40MB 以内、Medium なら 25MB)
- マテリアルを統合する(Poor で 4、Medium で 2)
- PhysBone を 8 個以内(Medium なら 6 個)に絞る
5. File → Build Settings でプラットフォームを Android に切り替えてアップロード
手作業でやると、3 はマテリアルの数だけシェーダーを差し替える作業になります。ここを自動化するのが VRCQuestTools で、変換設定で PhysBone をどこまで残すかも選べます。手順は「VRCQuestTools PCアバターをQuest(Android)対応にする手順」にまとめています。4 の軽量化は、Avatar Optimizer の Trace and Optimize を付けるだけでも効きます(「Avatar Optimizer(AAO)入門 非破壊でアバターを軽くする」Avatar Optimizer(AAO)入門 非破壊でアバターを軽くする)。
引用記事VRCQuestTools PCアバターをQuest(Android)対応にする手順アバター
引用記事Avatar Optimizer(AAO)入門 非破壊でアバターを軽くするアバター
どこから削るか
PC 版のアバターが Quest で Very Poor になる原因は、ほとんどがテクスチャメモリとポリゴン数、マテリアル数の3つです。効く順に見ていきます。
テクスチャメモリ: 4096 のテクスチャが数枚あるだけで 40MB を超えます。Android 版のテクスチャは Unity のインポート設定で Max Size を 1024 か 512 に下げるのが最初の一手です。Quest では ASTC 圧縮が使われるので、PC 版の設定とは別に Android タブで指定できます。詳しくは「VRAM削減のテクスチャ圧縮テクニック」を参照してください。
引用記事VRAM削減のテクスチャ圧縮テクニック技術・制作
ポリゴン数: 服で隠れる素体のポリゴン、装飾の細かい小物、髪の内側などを削ります。AAO の Remove Mesh By BlendShape は貫通防止シェイプキーで隠れる部分を自動で消してくれます。
マテリアル数: Medium の上限は 2 です。体・髪・服でマテリアルが分かれていると、それだけで超えます。テクスチャをアトラス化してマテリアルを統合するか、Poor(4 まで)で妥協するかの判断になります。
PhysBone: 髪・スカート・アクセサリーで 10 個を超えていることは珍しくありません。髪と一番目立つ揺れものだけ残し、残りは Android 版から外します。
無理のない範囲で
凝った PC アバターを Medium まで持っていくのは、それなりの作業量です。「Quest の人にはシンプル版が見える」状態でも十分実用的ですし、まず Poor でアップロードできる状態を作り、後から少しずつ削っていく方が挫折しません。
対応が難しい場合の保険として、フォールバックアバターを設定しておきましょう。フォールバック対応のアバターを選んでおけば、自分のアバターが表示されない相手にも、青いロボットではなく自分で選んだ姿が表示されます。販売アバターには最初から Quest 対応版が同梱されているものもあるので、購入前に BOOTH の商品説明で確認するのも手です。
落とし穴になりやすい点
Build Settings の切り替え忘れ: プラットフォームが PC のままアップロードすると、Android 版として登録されません。逆に Android に切り替えたまま PC 版を上げ直すと、PC 版が消えることはありませんが混乱のもとです。作業後は必ず PC に戻してください。
PC 版と Android 版で PhysBone の数が違う: 同期がずれることがあります。VRCQuestTools の Network ID Assigner がこの問題を扱います。
Android 版だけマテリアルが白い・真っ黒: VRChat/Mobile 系シェーダーは PC 用シェーダーの設定をすべて再現できません。変換後に Android 版のマテリアルを開き、テクスチャが正しく割り当てられているか確認してください。
Unity 側の事前チェックで弾かれる: AAO などビルド時に適用される最適化は、SDK の事前チェックには反映されません。最適化後の実際の値は AAO の「Actual Performance Window」で確認します。
よくある質問
Q. Quest 対応すると PC 版の見た目も変わりますか。
A. 変わりません。PC 版と Android 版は同じ Blueprint ID に紐づく別のビルドで、それぞれのプラットフォームでだけ使われます。
Q. Quest 版は何ランクを目指せばよいですか。
A. Quest 単体の相手に初期設定で見えるのは Medium 以上です。難しければ Poor でも、相手が Show Avatar を選べば見えますし、揺れものも残ります。Very Poor は揺れものが外され、将来サポートされなくなる可能性があります。
Q. PICO でも同じですか。
A. PICO 版も Android 版アバターを使うため、制限と対応方法は同じです。
Q. lilToon の色替えを Quest 版にも反映できますか。
A. シェーダー自体は使えないので、色替え後のテクスチャを書き出して、VRChat/Mobile 系シェーダーのマテリアルに割り当てる形になります。VRCQuestTools はこの変換を自動化します。
公式情報
VRChat Creators Docs「Quest Content Limitations」:https://creators.vrchat.com/platforms/android/quest-content-limitations/
VRChat Creators Docs「Avatar Performance Ranking System」:https://creators.vrchat.com/avatars/avatar-performance-ranking-system/
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